球が飛んでくる

誰かが球を放るやろ、打たせるためか或いはストライクかボールを取るために。手錬の者ならその目的に応じた力がいい加減に伝えられるし、そうでない者でも何がしかの力を添えて放るだろう。球は、人が密集しているベース上に到達するまでに、主に二酸化炭素と塵を掻い潜って中空を進行する。いや、手元で伸びるとはどういうことだろう、確か放られた瞬間から力は徐々に弱まってゆくのではなかっただろうか。ホップ、徐々に弱まりながら上昇するとはどういうことなのだろう。目と腰が同じ奇跡で球を見つめる。腰が浮く、足が上がる、一瞬見失う、振りかぶる。ガチーン、足の指先まで伝わった電気がもう一度、指先にリターンして球を弾き返す。10人の頭の右側から、じりっと汗が流れる落ちる。