たまたま聴かなくなった音楽

今日、松本市民芸術館でなにゃかんややっていた。主ホールでは誰かのコンサートが催されるらしく、午後三時というのにえらい行列ができていた。コンサートの時間はどんな小説でも現実世界でもだいたい夜と相場が決まっていて、なんじゃこりゃねーと思ってあたりを見回してもポスター一つない。受付のスケジュールを見てもわからん。まいっかなんて私達が使用する小ホールに移動すると、エミコ先生に「堀井君びーずって知ってる?私知らなかったの、有名なの?」って聴かれて、「あーB'zですかー。ハードロックのバンドです、有名ですよ」ってそっけなく答えたりして。行列を見渡すとなるほど、三十代から四十代後半のちょっとやんちゃそうな人びとが多い、中にはお子様づれもいらっしゃる。なんとも松本では、他のミュージシャンではなかなか見られない、これから起こる出来事を血眼で待ちわびる人たちの束、B'zとわかって僕は少々気おされた感じ。

小学校の時に始めて買ったCDは「たま」の『さよなら人類』のはいったアルバムで、恐らく次はB'zだった気がする。相当好きで、歌の意味もわからず『ZERO』を友人と歌っていた。さっき思い出してみたらまだ歌えた。だんだんと他のかっこいい海外や日本の音楽が僕の周りにたまたま溢れてきて、B'zとは疎遠になっていった。高校生の時はB'zを聴いている奴を、奴呼ばわりしていた。でもなんとなくベスト版を借りたりして『太陽の小町エンジェル』なんか実は好きでこっそり聴いていた。B'zってある時期に、しかもかなり長い期間に激売れしたので、同世代の人々で早くにコアな音楽に目覚めなかった人の音楽の棚に入ってるんだろうなと思う。キャッチーなメロディーと、野生的な立て乗りサウンド、不良心をくすぐる歌詞のブレンドが最高だった、異様なポピュラリティーがあるんだろう。

たまたま他の音楽が色々なところから流れ込んできたから、僕は今この行列にならんでいないけれど、B'zに出会ってそのままずっと愛してきましたぜ、って人たちの列だった。どうしょうもなく曲はダサいけど、やっぱり好きです。

「愛の爆弾はもう沢山」